夏の怪談 ★☆☆☆☆
ある夏のこと。小児病棟の指導士さんが、病院で実際にあったという、少しひんやりするお話を聞かせてくれた。 この病院は、むかし戦地だった跡地に建てられたと聞いた。敷地の一角には、慰霊碑のある静かな庭がある。
夏の怪談の一環で、子どもたちはプレイルームに集まり、輪になって話に耳を澄ませた。
その夜、病室に戻り一度は眠りについたものの、窓の向こうから「カラン……カラン……」と、下駄のような音が響いてきて、寝る前に聞いた指導士さんのお話を思い出し、思わず耳をふさいだ。 慌ててイヤホンを取り出して音楽を流し、さらに薄がけ布団に頭からくるまってみたけれど、かき消されず聞こえてきた。怖さと眠気の入り混じった、ぼんやりした気持ちで、夜をやり過ごした。怪談なんて聞かなきゃよかった。もう、コワいんですけど…ホントに。
気がつけばあたりが明るくなって、翌日の朝を迎え、ほっとしていた。その後、そんな下駄の音は聞こえたことはなかった。
同じ年の事だっただろうか。一階から二階病棟へと続くスロープを歩いていた。
そのとき、誰かが横をすり抜けるように走っていった。 黒い人影。 スロープを上りきると突き当たりには旧無線室があり、その扉のほうへ消えていった。
おぼろげな夏の、ちょっとひんやり怪談の回でした🍧😋
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